幼少期から神経質だったぽよらにとって、精神科医・精神分析家のカレン・ホーナイ(1952年12月4日没)の書物はとても価値ある1冊です。
・自分はなぜ神経症になってしまったのか
・どんな心理的メカニズムが働いているのか
・神経症は治るのか
についての知識を得ることができたからです。
このブログでは、カレン・ホーナイの分析と自らの体験をベースに「神経症」という病気を考察し、なるべくわかりやすい言葉でまとめます。
【ホーナイ全集 第6巻 神経症と人間の成長 】
出版社 : 誠信書房
発売日 : 1998年6月
ページ数 : 523ページ
内容:カレン・ホーナイによる神経症に関する学術書
これまでのまとめブログはこちらです。
第1巻 女性の心理 カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第1巻】女性の心理まとめ
第2巻 現代の神経症的人格 カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第2巻】現代の神経症的性格まとめ
第3巻 精神分析の新しい道 カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第3巻】精神分析の新しい道まとめ
第4巻 自己分析 カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第4巻】自己分析まとめ
第5巻 心の葛藤 カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第5巻】心の葛藤
第6巻 神経症と人間の成長 カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第6巻】神経症と人間の成長についての考察と名言まとめ
第7巻 精神分析とは何か カレン・ホーナイ【ホーナイ全集 第7巻】精神分析とは何か
神経症とは?
まずはじめに、カレン・ホーナイが考える神経症とはなにか?について説明します。
カレン・ホーナイいわく、神経症は自分と他人との関係における障害のことで、特に自分との関係が重要です。
本来人間には自分を成長させるための潜在力が備わっており、その中心にある「本当の自分」がなんらかの不適切な条件によって抑えられると神経症になります。
では、神経症になるメカニズムを見てみましょう。
【神経症になるメカニズム】
1. まわりの世界から孤立して自分は無力だと感じると、「不安」が強まり人間関係をつくりにくくなります。
そこでできる限り不安を小さく抑えようとして、対人関係の中で「従う、攻撃する、逃げる」の態度をとります。
2. これらがうまくいかないと、自分の中に「葛藤」が生じます。
3. この葛藤を解決するために「自分を理想化する」ようになります。
やがて「理想化された自分」を「本当の自分」と同一視するようになり、結果「本当の自分」を捨ててしまいます。
4. しかし結局は、理想化された自分になれず「自己嫌悪」に陥ります。
5. 現実は想像通りにいかないと気づくと、「現実は間違っている」「周囲がわるい」「みな自分に敬意を払うべき」「自分は特別扱いされて当然」と非現実的な権利を主張するようになります。
(ただし、当の本人は主張を通すための努力はなにもしません。)
6. こういった「べき」が満たされない現実に直面すると不安症状が表れます。
その後なんらかの方法で「理想の自分」と「本当の自分」とのギャップを埋めたり、人生や治療を通して前向きな力を持ったりすることで、「本当の自分」を発見することになります。
ぽよらの神経症
物心ついたときから、ぽよらの世界は不安で満ちていました。
記憶をたどっても、思い出すのはいじめや暴力といったツライ記憶ばかりです。
・だれにも気持ちを分かってもらえない
・だれとも関わりたくない
・何をやってもうまくいかない
・生きるのがツライ
この世界から抜け出すために、自分を押し殺してひたすら耐え忍んでいましたが、状況は一向に良くなりませんでした。
いつからか「いまの自分は本当の自分ではない、本当の自分は別の世界で幸せに暮らしているんだ」と思い込むようになり、現実から逃げるようになりました。
自分が発する言葉、カラダ、感じる心のすべてをだれかに操られているような感覚で、ものすごく怖かったのを覚えています。
やがて、自分も他人も思い通りにならない状況に
・自分はダメな人間
・もう何も夢や希望なんてない
・この世界からは脱出できない
・いっそのこと人生を終わらせたい
と、極端で破壊的な方向にエネルギーを向けるようになり、自分の心とカラダを痛めつけること、つまりは自己破壊が唯一の解決策だと思い込むまでになってしまったのです。
一時的に「やっとこの状況から抜け出せる」と思える状況になったこともありましたが、すぐに現実が打ち砕かれて逆戻りのくり返しでした。
そうやって毎日やり場のない不安・孤独・絶望と闘っていたら、この気持ちが外に向かうようになりました。
・わたしは人に傷つけられるべき人間ではない。ひどいことをするあいつは悪だ!
・まわりの人間がわたしへの態度を改めるべきなんだ!
しかし、この他人に対する敵対心は現実になるどころか自分に跳ね返ってきてしまい、どんどん神経症が悪化していったのです。
昔の記憶をたどっているためうろ覚えの部分はありますが、おおそよカレン・ホーナイの分析があてはまっていることがわかります。
神経症になる人は、みな同じような過程をたどっていると想像できます。
神経症を克服できたワケ
ぽよらは根っからの神経症ですが、幸いそんな人は家族や友達を見ても自分一人だけでした。
特に両親はぽよらの性格を十分わかっていたため、幼少期から「とにかく外の世界を見ること。知識を深めて自分の力で世界を広げること。」と口酸っぱく言われていました。
本人はなるべく誰とも接したくないし新しいことに挑戦するなんてもってのほかでしたが、無理やりいろんなことを経験させられました。
・海外で生活する
・日本で外国語を学ぶ環境に身を置く
・家族でイベントに参加して賞を取る
・ボランティアに参加する
・いじめられようが何されようが学校は休まない
・本を読んで知識を得る
・興味のあることはやってみる
この教育方針は当時は本当に苦しかったのですが、一方でこの経験を通して本当の自分を知ることができ、自分に自信がついたことで将来の夢も少しずつクリアになっていきました。
大人になってからは読書を趣味にし、これまでの自分なりに考えた病気の克服法や価値観は本当に正しいのか?を自問するようにしました。
いまでこそわかるのですが、何事も自分の心ときちんと向き合うこと、そして経験をしてこそ答えが見つかるのだと感じます。
ここで、カレン・ホーナイが導き出した「神経症の治し方」について名言をご紹介したいと思います。
神経症の治し方
カレン・ホーナイいわく、神経症でいることは多くの弊害をもたらします。
・すべてをまわりのせいにしてしまうため良好な人間関係を築けない。
・自己評価が低いため、接する相手は自分よりレベルが低い人に限られる。
・夢も希望も失われるため、目標を極端に低いところに置いてつまらない人生を送ることになる。
・絶対的に健康で冷静であるべきだと感じているため、それと反対の兆候が少しでもあると自己嫌悪に陥る。
これを回避してよりよい人生を送るためにはどうしたらいいか?
カレン・ホーナイの名言の中からいくつか厳選してご紹介します。
■自己嫌悪が増大していないか、自分の解決策や価値観は本当に正しいのか自問する
■健康的な人と親密で継続的な人間関係をもつ
■自意識が弱まり、脅えが小さくなり、他人の期待に応えようとすることがなくなり、正しく完璧であろうという欲求が弱まるほど才能のすべてをよりよく発揮できるようになる。
■理想の自分・偽りの自尊心を捨て、「本当の自分」を発見し、自己実現をめざして努力する。
■<べき>の考えを捨てる
■「理想化された自分」と「本当の自分」のあいだでおこる反動は、成長にともなう痛みであり振り子であることを認識する。
それがわかれば以前より強くなれるし反動も徐々に短く弱くなる。
■恐怖は、進みたい方向がはっきりしてくるに従い減少する。
■神経症がなくても生きていけるし、それがないほうがよりよい生き方ができることを自覚する。
■障害を、生きるために必要不可欠な部分として受け入れる。
自分についていえば、
・自分の感情、願望、信念をはっきりと深く経験する。
・潜在する力をのばし、それらを建設的な目的のために使用する能力を高める。
・自分と自分の決断に責任をもち、人生の進む方向を明確に確認する。
対人関係についていえば、
・偽りない感情を表し自分を他者に関係づける。
・他者を独自の権利と特長を持った個人として尊重する。
・助け合いの精神を発達させる。
仕事に関しては、
・自尊心や虚栄心を満足させることより仕事をすることが大事。
・自分の才能を発揮し発達させ、もっと生産的になることを目指す。
■世界における自分の立場を見出し受け入れる。能動的な参加を通じて世界への帰属感を得る。
■外部が変わらなくても、自分との関係を好転させるように努力する。
カレン・ホーナイに興味がありましたら、ぜひ他の著作も手に取ってみてください。