2019年2月、右乳房の左内側にできた「繊維線種だろう」と言われていた3.4㎝の腫瘍をマージンなし・部分麻酔で摘出し、術後はじめて「良性葉状腫瘍(ようじょうしゅよう」と診断されました。
このブログでは、葉状腫瘍とは何か、自身の体験談、葉状腫瘍に関するQ&Aについてまとめます。
※葉状腫瘍に関する情報は、自身の体験談の他に、専門家の知見やウェブ上の医学論文等を参考にています。
葉状腫瘍とは?
葉状腫瘍は、乳腺にできる比較的稀な腫瘍です。
発生率は全乳房腫瘍の1%未満、2万1千人に1人の割合です。
乳腺は上皮細胞と間質細胞から成っており、そのうち間質細胞から発生して葉っぱ状に増殖したものを「葉状腫瘍」と言います。
(上皮細胞が悪性化すれば乳癌、間質細胞が悪性化すれば肉腫となります。)
腫瘍ができる原因は定かではありませんが、女性ホルモンの影響とも言われています。
悪性度の分類
葉状腫瘍は、良性・境界・悪性に分類されます。
大部分は良性と考えられていますが、良性だからといって再発・転移しないわけではありません。
良性か否かは3つのポイントで決まります。
1.間質への浸潤性増殖
2.核分裂
3.細胞密度
好発年齢
葉状腫瘍はどの年齢にも発生します。
ぽよらは30代で発症しましたが、一般的には40代の女性に好発するようです。
良性は若い年代、悪性は年配の方に多いという特徴があります。
男性の発症は極めて稀です。
大きくなるスピード
良性・境界・悪性のいずれも、比較的早く・大きくなります。
形が小さいうちは丸くてツルっとしている繊維線種と似ていますが、大きくなるにつれて歪(いびつ)になり、周辺組織に癒着するようになります。
検査
通常は問診、触診、超音波検査が行われます。
上記検査で何らかの異常が認められた場合は、精密検査としてマンモグラフィーや細胞診を行います。
ただし、確定診断のためには、腫瘍を手術で摘出して病理検査をする必要があります。
治療・後遺症
治療の原則は、1cmの余裕を持って腫瘍を完全に手術で切除することです。
腫瘍ギリギリで切除すると、局所再発や悪性度が高まるリスクがあるためです。
(ぽよらはマージンを希望しましたが、実際にはマージンなしだったため、術後数年間は本当に再発リスクに苦しめられました。)
放射線や薬物療法の効果は明確ではないため、勧められていません。
術後の後遺症はほとんどありませんが、体質によっては傷口がケロイド化します。
(ぽよらもケロイド化したため、おっぱいの美容脱毛ができません。)
再発・予後
■治癒率:葉状腫瘍全体でみると95%以上
■局所再発率:全体では約20%、悪性は10-40%
■局所再発までの期間:初回手術から平均2年程度
■診断後の生存率:悪性の場合は5年で91%、10年で89%、15年で89%
★ぽよらの経過一覧表★
体験談を詳しくお伝えする前に、術前から術後の経過を時系列にまとめます。
日付 | 腫瘍サイズ | 検査場所 | 検査・手術内容 | 診断 |
2013.3 | 10mm以下 | 市の定期健診 | 超音波 | ・右に1つ、左に2つ10mm以下の繊維線種あり。 ・要経過観察(6ヶ月) |
2015.11 | 8.3*5.4*8mm | 〃 | 〃 | ・右に4つ(内1つは新規)。左は異常なし。 ・要経過観察(6ヶ月) |
2016.11 | 8.7*6.6*9.2mm | 〃 | 〃 | ・右4つのうち1つがハッキリしてくる。左は異常なし。 ・要精密検査 |
2016.12 | かかりつけ医院 | マンモグラフィー1回目 | 繊維線種だろうとの診断 | |
2017.5 | 12.5*7.3*14.3mm | 〃 | 超音波 | 繊維線種だろうとの診断 |
2017.9 | 16.2*8.9*16mm | 〃 | 〃 | 繊維線種だろうとの診断 |
2018.6 | 25.2*13.1*24.3mm | 〃 | マンモグラフィー2回目 | 繊維線種だろうとの診断 |
〃 | 針精検1回目 | ・しこりが2cmを超えたため針精検。 ・結果:検体量が少なく確定困難だが、明らかな悪性所見や葉状腫瘍を示唆する所見はなし。 | ||
2019.1 | 27.3*19.2*28.7mm | 〃 | 針精検2回目 | ・しこりが厚みを増したため針精検。MRIはパニックのため拒否。 ・繊維線種か良性葉状腫瘍との鑑別が必要。悪性所見なし。 |
専門医がいる他院 | マンモグラフィー3回目 | ・繊維線種だろうから切除しなくてもいいが、念のため取ってもいいとの診断。 ・予約がいっぱいのため手術するなら数か月後になるとのこと。 | ||
2019.2 | かかりつけ医院 | 超音波 | 3cmを超えたため手術適応 | |
〃 | 手術 | ・マージンなしの手術(※マージンなし≠ゼロではない。執刀医によると1mm~多くて5mmとのこと。) ・取り残しなしとの判断 | ||
34*33mm | 〃 | 病理検査 | ・やや細胞密度の増した領域はあるものの、分裂像や異形の核はなし、悪性所見なし。 ・断端陰性(※断端検査をしない場合があるようですが、必ずお願いしましょう!!) | |
2019.3 | 専門医がいる他院 | 超音波 | 術後セカンドオピニオンで問題なしとの判断 | |
2019.8 | 〃 | 〃 | 〃 | |
2020.2 | 〃 | 〃 | 〃 葉状腫瘍の再発より、年齢的に乳がんを心配するように言われる。 | |
その後 | かかりつけ医院 | 超音波 | 半年ごとのエコーで問題なし |
術前の経過
ここから先は、上の表に沿って経過を詳しく説明します。
※腫瘍を一般的な名称である「しこり」と表記しています。
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10年ほど前、市の健診で乳房の超音波検査を受けました。
当初から右乳房に1つ、左乳房に2つのしこりを指摘されていましたが、「繊維線種」や「のう胞」だろうとのことで、念のため半年後の経過観察になりました。
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最初の検診から2年後。
右乳房のしこりが1つから4つに増加。
そのうち1つは前回から変化なし、2つは乳腺症、1つは新規との診断で、この年も半年後の経過観察になりました。
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最初の検診から3年後。
右乳房の新規のしこりが昨年よりもハッキリと超音波の画面に映っていたため「要精検」となり、かかりつけの病院で精密検査をしてもらうことにしました。
しこりの感触、大きくなるスピード
最初はしこりが1㎝程度と小さかったため、乳房チェックの際にはまったくしこりに触れませんでした。
しこり自体に痛みはなく、皮膚症状やその他の症状も特になしです。
しこりが2㎝を超えたあたりから、手で触れたときにわかるようになりました。
感触は、
・ツルっと丸い
・硬いけど消しゴムのような弾力がある
・動かすとコロコロ動く
という特徴がありました。
医師いわく「増大傾向にあるしこりは3㎝を超えると切除の対象となる」とのこと。
繊維線種でも増大するものがあるようだし、手術が怖かったため、なるべく手術はしない方向でいくことにしました。
そしてあるときを境に、まるでネジが外れたかのように一気にしこりが大きくなってきたのです。
・形がゴツゴツと歪になってきた
・縦にサイズを増してきた
・周囲の皮膚にへばりつく部分がでてきた(動きが鈍くなってきた)
毎日しこりに向かって「小さくな~れ」と唱えていたのに、無念!
精密検査
念のためMRIをすすめられましたが、閉所でパニックになる恐れがあるため拒否。
担当医にすすめられた選択肢の中から、まずは「マンモグラフィ 」を、それから乳房に針を刺して細胞を採取する「針精検」をすることにしました。
マンモグラフィは相当痛いものだと聞いていましたが、個人的にはガマンできる程度の痛みでした。
針精検の針は長くて大きいため少し怖かったですが、カラダへの負担はほとんどなく、部分麻酔をしてから30分~1時間程度で終わりました。
ただ、針で刺そうとしてもしこりが逃げてしまうため、医師は採取に手こずっていたようです。
術前セカンドオピニオン
増大傾向にある右乳房のしこりは、痛み等の症状はまったくなかったものの、直感で「このままではまずい!」と焦りを感じ、セカンドオピニオンを受けることにしました。
そこで、紹介状を持って県内の乳がん専門医がいる病院に行きました。
超音波検査とマンモグラフィーの結果、両胸合わせて10個近くの「繊維線種」があることが判明。
増大傾向にあるしこりも、恐らく繊維線種だから切除の必要はないとの診断でしたが、なるべく早く手術したいと申し出たところ、「念のため切除してもいいかな」と言われました。
しかし、その病院ではすぐ手術できる空きがない上、ぽよらの症状から緊急性がないと判断されたため、手術は数ヶ月後になりました。
その間もぐんぐん増大していくしこり。
結局、なるべく早く手術できそうな、かかりつけ医のいる地元の病院に決めました。
手術
■手術場所:かかりつけ医のいる一般外科がある病院
■手術方式:局所麻酔、腫瘍摘出術
■執刀医:かかりつけ医は補助で執刀医は別の先生でした
■所要時間:1時間40分(予定は40分)
■費用:保険適用で2万円強だったと記憶しています
手術当日は、割と落ち着いていました。
手術中は好きな音楽を流してもらえたし、看護師の方たちが話し相手になってくれたからです。
とはいえ、術中の血圧は130以上、心拍数も100前後ありました。(もともとすぐ血圧が上がるし頻脈傾向です。)
麻酔のおかげで術中はさほど痛みはありませんでしたが、最初に打った麻酔は強く鋭い痛みがあり、心臓がドクン!と波打ったのを覚えています。
うろ覚えですが、途中で追加の麻酔を打ちました。
手術が終わってからしこりを見せていただいたところ、ジャガイモのような形で縦横比は同じくらい、弾力はあるものの硬そうで白っぽかったです。
手術が終わるとそのまま自分で車を運転して帰宅しました。
手術当日から普段通りの生活ができたので、料理をしたり掃除したりして気を紛らわしていました。
お風呂はシャワーのみOKでした。
術後の経過
薬の副作用
手術後、痛め止めと化膿止めの薬を3種類出されました。
薬は苦手のため拒否しましたが、夏場の暑い時期で化膿しやすいため、やむを得ず服用することにしました。
しかし結局、処方された薬の1つ(フロモックス?)がカラダに合わなかったようで、服薬翌日から真っ黒でやわらかい便が出はじめたため、薬剤師に相談して服薬3日目にしてすべての薬をやめました。
便はその後1-2日で普通便に戻りました。
薬のおかげで、痛みは少し気になる程度で化膿することもありませんでした。
ただ、皮膚が弱いため、傷口に貼ってあるシップがかゆくてたまりませんでした!
告知
術後、傷跡の確認・超音波検査・抜糸のため何度か病院に通いました。
告知までは眠れぬ夜を過ごしましたが、その間もただの繊維腺腫であることを願っていました。
そしてついに、執刀医の先生から摘出したしこりが「良性の葉状腫瘍」であることを告知されたのです。
ぽよらは冷静さを失い泣きまくりました。
なぜならば、手術の際にガイドラインに沿ってマージン1cm以上を希望したのに、1mm~5mmしか取っていないことを知ったからです。
しこりが周辺組織に癒着していたというのに!
しかも、執刀医の先生は「葉状腫瘍は取っても取ってもまた出てくる。出てきたらまた取ればいい。術後の経過観察や検査は年1回で十分。」と無神経な発言をしたのです。
しこりが葉状腫瘍だったというショックに加え、再発の不安が一気に押し寄せました。
(葉状腫瘍は稀な腫瘍のため、医師たちは臨床現場で葉状腫瘍の患者に出会う機会がないまたは非常に少ないそうです。)
結局、執刀医は「取り残しはないが他院にセカンドオピニオンを求めるように」とぽよらに告げました。
術後セカンドオピニオン
マージンなしで3.4cmの腫瘍を摘出したため、再発のリスクを恐れてセカンドオピニオンを求めました。
ネットで受診先を調べ、県内外の乳がん専門医のいる病院に決めました。
ネットの医療相談窓口も利用しました。
しかし、いずれも同じような回答でした。
・追加手術は必要なし
・年1回の経過観察で十分
・葉状腫瘍の再発より年齢的に乳がんを心配すること
この頃のぽよらは気持ち的にまったく余裕がなく、寝ても覚めても葉状腫瘍の情報を漁っては不安にさいなまれていました。
傷跡
傷跡は、しこりと同じく3.4㎝ほどの長さで、右乳房の乳輪に弧を描くように残っています。
術後、真っ赤で痒みがあった傷口は、次第にかさぶたになってきれいに剥がれました。
途中、こんなひどい状態なのに本当に治るの?と心配していましたが。
その後は完全にふさがり、白い線状になって目立たなくなったものの、一部がケロイド化してしまいました。
生活で気を付けていること
葉状腫瘍は原因がはっきりとわかっていません。
医師によっては女性ホルモンの影響だとか、それは違うとか、意見がいろいろあるようです。
ぽよらが思うのは、腫瘍ができるということは細胞がなんらかの影響で暴走していると考えられるため、原因がわからないながらも心身に良い生活習慣を心がけることが大切だということです。
たとえば、
・ストレスをためない
・カラダにいいものを摂取する
・適度な運動をする
といっても、実際には中々お菓子をやめられなかったりします。
ストレスにも弱いです。
そしてあろうことか、1年で体重が8kgほど前後する体質です・・・。
術後1~4年半目の検診結果
再発の不安は、術後何年かはぽよらを苦しめました。
特に1年目はきつかったです。
しかし、その後は再発の兆候や他のしこりの変化は見られず、次第に葉状腫瘍のことを考えなくなりました。
ただ1つ気になっているのは、術後2年半の検診で見つかった左胸(手術とは反対側)の新しいしこりです。
ここ1年半変化はないものの、ぽよらの乳房には相変わらずたくさんのしこりがあるし(1つは縮小傾向)、乳腺症は強いままです。
そのため、これからも半年ごとに検診を受けたいと思います。
ちなみに、半年に1度受けている超音波検査の費用は、保険適用で1300円ほどです。
葉状腫瘍Q&A
葉状腫瘍と告知されてから、自身の葉状腫瘍に関する不安を解決したく、病院やネットを利用して医師に質問しました。
ネットの医療相談窓口はこちらの3つです。
それぞれの医師から得た回答をまとめます。
乳房のしこりについて
■葉状腫瘍のしこりはもともと葉状腫瘍か、それとも繊維線種などが途中で変化したのですか?
もともと葉状腫瘍です。
■葉状腫瘍が多発すると悪性度は増しますか?
いいえ。
■手術が遅れると、悪性度はグレードアップしますか?
その可能性はあります。
その期間が1年なのか5年なのかわかりませんが…
増大傾向のある良性葉状腫瘍が、放っておけば「境界悪性→悪性」となるであろうことは容易に想像できます。
■ストレス、月経などホルモンバランスでしこりのサイズや組織に変化はありますか?
無関係です。
■葉状腫瘍にならないために気を付けることはありますか?
ありません。
検査・検診について
■針精検はしこりを増大させますか?
いいえ。
■経過観察は何年くらい必要ですか?
2年が目安です。
手術について
■マージンなしでしこりを切除し、病理検査の結果が「断端陰性」の場合、追加手術は必要ですか?
必要ありません。
①良性だから再発の可能性は必ずしも高くない。
②良性だから(万が一)再発してからでも(半年毎にエコーしていれば)遅くない。
上記①②を理解したうえで「それでも心配だから追加手術したい」という希望があれば、前回の執刀医に頼み追加手術すべきです。
常識的には…「3か月以内」に。(急ぐ理由がありません)
ただし、再手術する場合には中途半場ではなく「全麻で2cmのマージンをつける=多少の変形は許容する」覚悟が必要です。
■術後、切除した場所(皮膚の下)が石のように硬く動かないシコリのように感じ、時々キリキリした痛みもあります。これは再発ですか?
絶対に違います。瘢痕です。
術後そんなにすぐに「再発か?」などと想像するのは、『その執刀医に失礼』というものです。(常識的に考えましょう)
病理検査の結果について
■病理医によって所見は異なりますか?
その可能性はあります。
■断端陰性は周辺組織に残存なしと判断できますか?
はい。娘結節がなければ、残存なしです。
■”細長い腺管”や”細胞密度の増した領域”との記述は、悪性を示唆しますか?
違います。
■病理結果に間質への浸潤性増殖の記載がないのは、記載するほど増殖していない、または増殖がないからですか?
はい。
■「やや細胞密度の増した領域」がありましたが、その部分だけ一部境界型、良性と境界型が混在している、あるいは一部悪性の可能性はございますか?
悪性を示唆する要素の一つではありますが、他の要素(分裂像やbizarre核)が認められないので、悪性所見なしという事になります。
■摘出した腫瘍は皮膜で覆われていたのかどうか病理結果に記載がありませんが、どのように判断したらよろしいですか?
それは病理医に聞きましょう。
さいごに
自身の葉状腫瘍の体験談をブログで告白するまでには、実のところ何年もかかりました。
「情報を発信することで嫌な記憶がよみがえってしまう」
「葉状腫瘍のことは忘れて普通の生活を送りたい」
そんな気持ちがあったからです。
しかし、自分の乳房にしこりがある不安や、はじめての手術・検査、そして葉状腫瘍を告知されたときの心境・・・
葉状腫瘍に関する情報が少ない中、「もう長くは生きられないかもしれない」とさえ思って嘆き悲しんでいた自分を思い返し、この体験を活かすことが自分の使命だと思いました。
2万1千人に1人という希少な体験が、同じ病に苦しむ1人でも多くの人に届けば幸いです。